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日本の英語教育は失敗していなかった。ただ、"選ばれて"いなかった。オランダ教育 調査レポート

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こんにちは。

さっこ(@asaqom)です。

 

 

夏、終わらないで…とうかこの夏休み感、終わらないで…とここ最近は毎週末切ない気持ちでいっぱいになる。胸が張り裂けそう。でも暑いのは嫌い。

 

現実逃避のために海外感や非日常感を少しでも滲み出したくて、海外で買ったCDをかけてみたり、コーヒーを淹れてみたり、知らない遠くのパン屋に行ったり…よく自分の五感を騙くらかしにかかっている。

 

 田舎娘で、周りの環境は見渡せる範囲内だった私が、異文化を見つけて好きなものごとを増やすようになったのは、学校で英語というツールを教わったおかげだった。その便利な英語を広めたくて大学では中高英語教員免許を取り、仕事では英語教育に注力している学校機関の広告にも携わるようになった。

 日本企業や学校は他言語を扱える人をグローバル人材、国際人、など色々な表現で欲しがり、育てようとしている。わたしはいつでも、この表現を使いながらも違和感を感じてしまうのだ。

──多言語を読み書きできば、それでもう完成されてしまうんだろうか?

 

 英語学習プログラム、語学研修サービスを提供しているスウェーデン企業のEF(English First)は、オランダの英語能力指数はヨーロッパで最も高く、全世界で実施した英語能力テスト(2015年95万人の成人に対して実施)72か国中1位をマークしている、と発表している。(ちなみに日本は35位)

オランダは、オランダ語母語としている人口およそ170万人ほどの、小規模な国だ。国内で生活するなら母語だけでも十分なはずだが、海外との輸出入で成り立ってきた貿易国でもある(link to English page)ため、外国語(英語)は生活に欠かせないものであるという考え方がある。

そんな国になら、きっと日本が求める"インターナショナル像"のための教育へのヒントがあるかもしれない。

わたしは(インターネットの)海を渡って調査に向かった。

 

徹底された”平等”教育

 

 オランダの教育改革はちょうど今から100年前(!)の1917年に遡り、「自由教育条例」が施行されたことに始まる。

以降、市民団体から宗教団体、保護者会など様々な機関や組織によって多様な学校が誕生し、子どもはその中から自分達の意思で行きたい学校を選ぶのが主流だ

 

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▲オランダの教育体系。大きく初等・中等・高等教育に分かれ、試験もあるが基本的には本人の意思や面談などで進路が決まる。職業教育系、一般教育系など途中で方針転換も可能で、進路先は幾通りもの可能性がある。

 

 子どもの教育に対する考え方について、オランダの人々は子ども自身に任せるというマインドを持っているようだ。

子どものやりたいこと、道を決めていくのも自分自身、そこに本当に勉強が必要なのか、あるいはスポーツが必要なのか、時間をかけて理由を考えさせ、学ばせるのだそう。

 また、オランダでは初等教育〜高等教育卒業(年齢では4歳〜16歳)までは基本的に誰でも無料で、学校の特別行事用などに1年で100€(日本円で1万2千円ちょっと)かかる程度。

一時移住してきた子どもの初等教育に限り、政府から援助金が出ている公立のインターナショナルスクールがあり、費用は通常の学校よりは高額ではあるものの、私立よりは安価で通うことができる。

生まれた家庭環境や貧富の差が理由で、教育が制限されるといったようなことが少ないのだ。

 国が均質な教育を提供する日本と、子どもが必要な教育を自分で選ぶオランダ…。これからこの"平等"の考え方の変革には、日本もきっと直面するのではないだろうか。

 

 

英語は勉強するための教科?便利に使うための言語?

 

 オランダで英語学習は、遅くとも10歳までには開始しなくてはならない。

とくに2015年以降、政府はバイリンガルでない公立校や私立校でも、ドイツ語やフランス語、英語を「外国語科目」としてではなく、理科や社会など普通の教科の15%をこの第二言語だけで授業を行うことを許可している。

一方で一部の学校では、日本の大学のように第二外国語として母語以外の他言語教科を、4歳〜初期段階の教育から取り入れているところもある。(早い!)

  そんな中、初等教育ではIPC(International Primary Curriculum)という科目が必修科目として設置されているという。

www.ipc-nederland.nl

日本の「学際科目」や「総合教育」に似ているが、イギリスで生まれた国際社会に向けた新しいカリキュラムだそうだ。与えられたテーマにグループで取り組み、自分たちのテーマに必要な学びを探り・深めていくことで、全科目を横断的に学ぶことができる

ある時には<植物>から生態系を学んだり、想像の庭を校内に作らせたり、ある時には<チョコレート>からパッケージデザインを研究したり、製造工程を調査したり…大人でも楽しそう!

 

 オランダは国の市場が小さく、国内テレビ放送は輸入映画や番組が多い。BBCのような、グローバルマーケットで力があるような外部からコンテンツを購入している(link to English page)ため、吹き替えではなくオランダ語字幕つき・オリジナル音声で放送されている。

日本と違い、普段の生活でも外国語に慣れ親しめるため、話すことへの抵抗感が少なくなり、ティーンの流行りも必然的に外国のものが話題になるなど、外国語が日常に溶け込める環境要素が強いようだ。

 自発的な調べ物や学習の時に加え、毎日の会話にも使う機会があることで、外国語自分の知りたいことにつなげられる瞬間を体験し、言語=便利なものであることを実感でき、言語学習が自然に促進されているのだ。

 

 

<オランダ移住ママ>にオランダ教育インタビュー

 

 つい3ヶ月ほど前、fbに投稿された「移住しました」のポストを不意に見た私は、思わずPCに向かって短く叫んでしまった。

 

「かっこいい…!」

 

tatamimiさん(現オランダ在住。webデザインフリーランサー、一児の母。)とは大阪のWebデザイン系meetupで出会った。

5歳の娘さんと旦那さんとともに、オランダに移住して生活を始めたばかりで忙しさが最高潮なところ、なんとインタビューを快諾いただき、オランダ教育の実際のところを伺った。

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※画像はオランダの街並みイメージ

 

さっこ(以下さ)お久しぶりです。よろしくお願いします!

 

tatamimi(以下ta):元気そうでなによりです。娘も小さいので今はプレスクールのような所に通っていて、しかも通いだしてまだ1カ月なので、お答えできることは少ないかもしれませんが…よろしくお願いします。

 

さ:プレスクールとは、保育園みたいな感じでしょうか?

 

ta:オランダでは4歳から学校に入れます。うちの娘が通っているのは海外からオランダに来た子ども達向けのローカルスクールなので、生活はオランダ語ですが、話せない子は多いです。

 

さ:学校…じゃあ、日本の保育園というよりももっと幼稚園とかみたいに、アカデミック色が強いんでしょうか?カリキュラムガチガチに組まれてたりとか…。

 

ta:いえ、そういうわけではないです。子供ひとりひとりに合わせてカリキュラムが組まれる。だから先生一人に対する子供の数は少ないです。教科書的なものはあるけど少ないし、使わないこともあります。

いまうちの子のクラスは生徒が10人くらいです。 オランダの教育全体に対しては、子ども本人家族の意思や能力に合わせた「選択肢がある」ように思います。

 

さ:オランダでは勉強ができる子が最頂点ではなく、子どもによってゴールはそれぞれ違っていて、そこへの道筋もさまざま、ということですね。

 

ta:オランダだと子どもに自発的に決めさせながら、迷う時間も与えられるところがいいなと思います。

 

さ:自分のことは自己責任!という考えに基づいているから、小学校でも留年や落第は当たり前、という風に聞いています。

  逆に日本のほうがいいなと思うところはありますか?

 

ta:うちは保育園に行っていたのですが、やはり細かいところに気配りがされていたな〜と感じてます。

  劇やダンスや工作のレベルが高く、うまく指導されているし、特に給食の栄養バランスや食材の質が高いところや、預かり時間が長いところ(オランダの小学校は午後3時前に終わり、水曜日は午前のみ、土日は休み)は共働き家庭にとっては嬉しかったですね。

 

さ:サービス面というか、ホスピタリティというか…その充実ポイントは日本らしいですね。日本からの移住民は物足りなさを感じるところかもしれません。

 

ta:「移住民」って自覚はあんまりないんだけどね(笑)

 

彼女の持つ雰囲気は朗らかで、一見しただけではその中心にあるものには誰も気づかないかもしれない。

本当はチャレンジングで、信念があり、そして自分に正直な方だ。

 

ta:もっとこの国のことを知りたいという好奇心があったのと、未来がこれからどうなるかまったくわからない中で、子どもをオランダで育てるのは面白いかもしれないと思って、踏み切りました。

 

 

住む場所を変えることも、言語を操ることも、「手段」であり目的ではない。

日本の英語教育は失敗だったと言われることもあるが、少なくともわたしには手段を与えてくれた実績がある。

 

ただ、tatamimiさんの好奇心と子育てにとっての試みの一つがオランダ移住であったように、

読み書きができると、自分にとってなぜ良いのか?

コミュニケーションがとれると、何が起こるのか?

自分にとって必要か?…

こんなことを考えるきっかけを作れないものだろうか。

 

早くも2018年より、小学校の英語教育の先行実施が始まる。子どもが英語に出会える機会が増えることは、わたしにとっても喜ばしい。

どうか、子どもたちが「言葉が便利な道具である」ことに気づく機会になるように、と願っている。

 

参考記事

 

sacco(@asaqom)